2024年01月19日
【コラム】本当の相続放棄

「私は相続放棄をしたのに亡くなった父の借金を銀行が払えと言ってきたんです」

 

 弊所を訪れたご婦人は語気を強めて言いました。司法書士が詳しく事情を伺うと、以下のとおりでした
 
 2年前に田舎に住む父が死亡した、相続人は父の跡を継いで地元で商売をしている兄と、故郷を離れて都会でくらす妹(相談者)の2人
 
 父の告別式の後、妹は兄と話し合い、今まで父の世話をしてくれたことに礼を述べ、自分はもう嫁いだ娘なので何も相続するつもりはないこと、商売を引き継いだ兄が家も店も預金も全て相続すればよいと思っていることを伝えました。そして権利をすべて放棄するので兄の好きなようにしてくださいと伝え別れました。
 
 ところが、先日、田舎の銀行から連絡があり、亡父が残した借金につき、私も支払う義務があると伝えられました。借金がある事は聞いていましたが、私は2年前、確かに兄にすべて放棄する旨を伝えたんです。なんで私が払わないといけないんですか?
 
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 司法書士として相続の相談を受けていると、このような話をお聞きすることがあります。
 
 相続放棄とは、相続人が、亡くなった人の権利や義務を引き継ぐことを拒否する意思表示のことをいい、相続が開始したことを知ってから3か月以内に、家庭裁判所に申立をし、これが受理されることによって認められます(民法915条)。
そして、相続放棄すると、その者は最初から相続人でなかったことになります。
 
 つまり、本当の相続放棄は3か月以内に家庭裁判所に申立をしないと駄目なんです、もし妹(相談者)さんが家庭裁判所で手続をし放棄が受理されたのであれば、銀行からの請求にたいしても「私は相続放棄をしていますから」といって拒絶することもできたでしょう。しかし、今回の事例を振り返ると、妹(相談者)は、お兄さんに対して「私は放棄します」と伝えたのみですから、これは先に書いた民法上の相続放棄にはならないのは明白で、この場合、残念ながら妹(相談者)さんも、相続人の一人として、銀行に対して借金を支払う義務が発生していると言えます。
 

「相続放棄は3か月以内に裁判所」 覚えておいてください

 

※個人や法人が特定されないよう加工した情報を使用しています



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